福田美術館主催の「若冲誕生~葛藤の向こうがわ~」展において主要な見所の一つである「蕪に双鶏図(かぶにそうけいず)」は、2019年の4月に新発見されました。落款(らっかん)やモチーフの表現の仕方から現在見つかっている伊藤若冲の作品の中では最初期のものと考えられます。
若冲30代半ば作と言われている「雪中雄鶏図」(細見美術館)より、地面の凹凸などの表現にはやや未熟な点が見られるものの、鶏の鶏冠や羽の模様、蕪の葉の虫食いなどの細密描写にすでに若冲らしい独特のタッチが表れており、見応えのある作品です。
≪福田美術館≫
古来、歌枕として詠まれてきた嵐山は、多くの貴族や文化人に愛され、芸術家たちがすぐれた作品を生み出す源泉でした。現在は日本有数の観光地として世界中から観光客が訪れる場所となっております。
福田美術館はそのような嵐山の景勝地に、和風建築のエッセンスを取り入れたモダンなたたずまいの建築を据え、主に江戸から近代にかけての日本が誇る芸術家の作品を所蔵しています。コレクションを中心とした企画展は年4回開催。日本美術に詳しくなくても楽しんでいただけるような、心に残る展覧会を心がけています。
また併設のカフェは渡月橋が最も美しく見える場所に設置しており、四季折々に移り変わる嵐山の絶景を展示と併せてお楽しみいただけます。
(福田美術館/嵯峨嵐山文華館 PRマネージャー 中島 真帆さん)
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「おうちでミュージアム」は、地域が誇る美術館・博物館の名品を自宅にいながら楽しんでもらおうと企画しました。各館の学芸員や担当者が“お気に入り”の作品や、近々、お目にかかれる作品を一つだけ選んでご紹介します。世の中が落ち着いたら、ぜひ足を運んで、実際に五感で魅力を確かめてください。
【再開情報】
福田美術館「若冲誕生~葛藤の向こうがわ~」5/23(土)から再開
約30点の初公開作品が話題
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため4月5日から休館していた京都・嵐山の福田美術館は5月23日(土)から再開した。会期途中だった「若冲誕生~葛藤の向こうがわ~」(主催:福田美術館、京都新聞)は7月26日(日)まで会期が延長される。前期展示は6月29日(月)まで、後期展示は7月1日(水)からで、一部作品は途中で入れ替えの可能性もあるという。
近年人気を集めている江戸時代の画家、伊藤若冲(1716-1800)の作品約50点を展示する注目の展覧会。若冲の展示作品のうち、11点の館蔵品を含む約30点が初公開という。
京都錦小路の青物問屋「枡屋」の長男として生まれた若冲は23歳のとき、亡父に代わり家業を継いだ。家業のかたわら30代で描いた絵に才能を見いだした大典禅師をはじめとする禅僧や支援者たちは、「家業を続けるのか、絵に専念するのか」と葛藤に苦しむ若冲を精神的に支えた。彼らの援助と励ましによって、若冲は40歳で家業を弟に譲り、絵に専念し、多数の傑作を遺した。
今回の展示作品は、若冲の作品以外にも、曾我蕭白、円山応挙ら個性あふれる同時代の画家たちの作品も展示し、若冲の生きた18世紀京都画壇の秀作を楽しめる。
再開にあたり福田美術館は国際美術館会議(CIMAM)が公開した新型コロナウイルス感染症予防対策として美術館が注意すべき<来館者の安全><スタッフの安全><施設管理><パブリック・コミュニケーション>に基づき、対応を徹底。来館者に次のような協力を求めている。
- マスクもしくはそれに準じる物で口元を覆うこと
- 入館の際、非接触体温計にて検温(37.5℃以上の方は入館不可)
- 万一の場合連絡がつくようにするため入館時は居住地(○○市××区)、代表者氏名、電話番号を記入
- ソーシャルディスタンスの保持
- なるべく自身のスマートフォンでの音声ガイド利用
- 混雑を避けるためオンラインでのチケット購入を推奨
※オンラインチケットは1時間ごとの日時指定制で割引あり(但し、混雑回避のため受付するまで順番に並ぶことがある)
【開館時間】10:00~17:00(最終入館16:30)※火曜休館
【入館料】一般・大学生:1,300円、高校生:700円、小中学生:400円、障がい者と介添人1名まで:700円
【公式ホームページ】https://fukuda-art-museum.jp/
なお、「若冲誕生~葛藤の向こうがわ~」の会期延長に伴い、次回展覧会「大観と春草 -東京画壇上洛-」の会期も8/1(土)~10/11(日)に変更された。